■ 親友4


【side ゆきみ】



バイクで直人に送って貰って家の前で下ろされた。

「離れたくない」直人の全部がそう言っているようでやっぱり胸が痛い。



「好きだよ、ゆきみ」

『うん…』

「おやすみ」

『おやすみ…』



直人の顔が近づいてきて…咄嗟に顔を背けた。

ガチャっと向かいの家のドアが開いた音がしたから。

出てきたのは哲也。

久しぶりに見る哲也に涙が出そうになる。



『哲也…』



わたしの声に哲也の視線がこっちに飛んできた。

一瞬吃驚したような顔を見せたものの、その後すぐにわたしから目を逸らした。


待って哲也!!

行かないで!!

ゆきみはここにいるよ!!


見なかったことにされてしまうのが悲しくて、直人がそこにいることも忘れて哲也の所に走って行った。

自分から突き放して逃げたくせに…―――――



『哲也ぁっ…』



後ろからギュっと哲也の背中に飛びついた。

でも…――――「触んな」…え?

今なんて…?



『哲也…?』

「オトコの前でオレに触るんじゃねぇ」



そう言われて振り返ると、こっちを見ている直人。

その表情は悲しみに満ちていて…

直人にそんな顔をさせているわたしを軽蔑してるよね。

直人と付き合ってるくせに、哲也を忘れられないなんて。

バカみたいよね…。

奈々を守る為だなんて。

ワタルに見せつける為だなんて。

何もかもが中途半端なわたしを、哲也はやっぱり許さないんだって。



「もう行け」

『………』



動けないわたしを見てタメ息をつくと、顔を上げてわたしの向こう側「直人」クイって顎だけで直人を呼び寄せて…。



「お前の女だろ」

「哲也さん…」

「ちゃんと掴まえとけ」

「あの…」

「二度は言わねぇぞ」



離れていく哲也の背中を見ているわたしの目からはポロポロと涙が零れてしまって。

そんなわたしを見て眉毛を下げる直人。



「…やっぱり哲也さんじゃなきゃ嫌?」

『え…?』

「オレのこと、見てよ…ゆきみさん…」

『直人…』

「マジで好きだよオレ」

『直人…』

「抱かせてよ、ゆきみ…」



どうしたらいいの?

自分で蒔いた種だって分かってるけど、哲也と直人の間に挟まれて身動きすらできなくて…息もできなくなりそうで…。

ただただ直人をどこまでも傷つけているわたしを、哲也も許さないんだって。

日に日に積り積もってゆく直人の深い愛情に押し潰されそうだった。



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