■ 制御7
【side ゆきみ】
リュウジくんに哲也と別れて直人と付き合ってる…そう告げた次の日、吃驚するくらい早くその噂は広まった。
それを想定してわたしはお喋り好きなリュウジくんに告げたのだから。
あの日から哲也には逢っていない。
直人の所に逃げたわたしを追いかけてこないことが、哲也の答えなんだって思うしかなくて。
そんなわたしを直人は、その身体全部で癒してくれるんだ。
『そろそろ帰らなきゃ…』
「…帰したくねぇ…」
『直人って甘えん坊?』
クスって笑ってそう聞くと、ベッドに寝転がっていた直人の腕がわたしの腰に回されてそのまま後ろにグインと引っ張られた。
わたしをベッドに組み敷く直人は、一歳年下のはずなのに妖艶な顔で…
何も言わずに目を閉じるわたしに迷いなく唇を重ねる―――――
「ゆきみ…」
『うん…』
「好きだよ…」
『わたしも…』
嬉しそうに笑ってキスを続ける直人。
毎日哲也にされていたキスが、今は直人に変わっていて…
「愛してる」って言われていた言葉が「好きだよ」に変わって…
ただそれだけのこと。
それなのにどうしてこんなにも胸が痛いんだろう。
涙が溢れそうになるのを必死で堪えて目を閉じる。
暗闇に浮かぶのは哲也で…
哲也…なんでわたしを迎えに来てくれないの?
自分の中にある矛盾に押し潰されてしまいそうだった。
わたしには時間がないの、早く…早く…―――そう願って事件が起きるのをただ待っていたんだ。