■ 制御5
【side 奈々】
分からなくなる。
静かに眠るケンチを見ていると、何もかもが分からなくなってしまう。
やっぱり、あたしがoneに来なければ、こんな未来じゃなかったのかもしれなくて…―――
一度そう思うと、まるで自分が疫病神にでもなった気分。
あたしの為に自分を犠牲にしたケンチを、申し訳ないと思いながらも、その気持ちだけを思うなら、単純に嬉しかった。
同時に感じてしまう、ケンチの強い想い…
不意に握っていた指をほんの一瞬ギュっと強く握られた気がした。
顔を上げたあたしにケンチの瞼が揺れて、ゆっくりと瞳をあけるケンチが目に入った。
『ケンチ…』
声にゆっくりとこちらを向くケンチは、ホッとしたような顔を見せて「奈々」そう言って笑った。
大好きな、太陽みたいなケンチの笑顔に、鼻の奥がツーンとして涙が零れ落ちた。
『よかった…』
「ごめん、心配かけて。無事でよかった、奈々」
こんな時までもあたしの事を心配してくれるケンチ。
でもそれがケンチらしいと思えてしまうんだ。
いつだってケンチはあたしを一番に、あたしの幸せを一番に考えてくれていた。