■ 制御5


【side 奈々】



分からなくなる。


静かに眠るケンチを見ていると、何もかもが分からなくなってしまう。



やっぱり、あたしがoneに来なければ、こんな未来じゃなかったのかもしれなくて…―――


一度そう思うと、まるで自分が疫病神にでもなった気分。


あたしの為に自分を犠牲にしたケンチを、申し訳ないと思いながらも、その気持ちだけを思うなら、単純に嬉しかった。


同時に感じてしまう、ケンチの強い想い…



不意に握っていた指をほんの一瞬ギュっと強く握られた気がした。


顔を上げたあたしにケンチの瞼が揺れて、ゆっくりと瞳をあけるケンチが目に入った。



『ケンチ…』



声にゆっくりとこちらを向くケンチは、ホッとしたような顔を見せて「奈々」そう言って笑った。


大好きな、太陽みたいなケンチの笑顔に、鼻の奥がツーンとして涙が零れ落ちた。



『よかった…』


「ごめん、心配かけて。無事でよかった、奈々」



こんな時までもあたしの事を心配してくれるケンチ。


でもそれがケンチらしいと思えてしまうんだ。


いつだってケンチはあたしを一番に、あたしの幸せを一番に考えてくれていた。



- 158 -

prev / next

[TOP]