■ 悲しい嘘8
玄関を出てすぐに直人に電話をかける。
【ゆきみさん?】
優しい直人の声に、堪えていた涙がドッと溢れた。
直人に罪をなすりつけることになってしまうけど、わたしの頭じゃこれ以外のことを生み出せなくて…
【ゆきみさん、どうしたの?】
『直人…ごめんっ…』
【え?なに?】
困惑した声の直人に言わなきゃいけないのは謝罪なんかじゃないけど、直人を巻き込んでしまうことに、わたしは『ごめん』と言わずにはいられない。
『ごめんね……逢いたい…』
【すぐ行く】
そう言った通り、居場所も伝えてないのに直人は5分もかからないでわたしの前に現れた。
バイクから下りようとする直人を止めて、わたしが直人のバイクの後部座席に飛び乗った瞬間、家のドアが開いて哲也がわたしの家から出て来た。
その、表情は…―――
『ダメ、直人早く出してっ!お願いっ』
「ふざけんなっ!俺の女連れてくんじゃねぇっ、直人っ!」
『直人お願い、行って』
すぐ後ろにまで迫っている哲也に、わたしは直人の背中にギュウっとしがみついて叫ぶ。
その瞬間、直人の右足がバイクのエンジンを踏んで、そのまま猛スピードで走り去った。
わたしの言葉は、絶対だ。
直人はわたしに絶対なんだ。