■ 悲しい嘘6


上目使いでわたしを見つめる哲也が色っぽい。


『逢いたかった』も、『愛してる』も、どれもこれも違う気がした。


わたしが哲也に伝えたい言葉それは…―――



「ゆきみ…?」


『好きになってごめんね』



哲也の目、大きく見開いて体制を変えると、わたしをベッドに組み伏せた。


「なに言ってんだ」でも、「ばかやろう」でもない切ない哲也の返事は、息もつく暇すらない、激しいキス――――


感情丸だしの哲也のキス…


唇を包み込む哲也の唇に、ほんのり声を漏らすわたし。


少し開いたその隙間を無理矢理こじ開けるように入り込む哲也の熱い舌に、意識が哲也に集中する。


決して優しいとは感じられない哲也のキスは、哲也のやり切れない想いが詰まっているみたいで、わたしは泣きそうになる。



わたしを守りきれなかった哲也の想い…


どんな想いで今からわたしを抱くの?



ずっと、ずっと…――涙が止まらなかったんだ。



哲也を好きになればなるほど、辛い想いをしている気がした。


それはわたしだけに留まらず、奈々までも…


そしてケンチを傷つけた。


この恋の代償が、こんなにも辛いものだなんて、思いもしなかった。



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