■ 悲しい嘘3
「大丈夫だから、後は俺達に任せて、奈々ちゃんはケンチに着いててやれよ。目が覚めて一番に見たい顔なんて、奈々ちゃんしかいねぇだろし」
ほんのちょっと口端を上げてそう言う哲也くんに、キョトンとした顔を浮かべるゆきみ。
『哲也分かってたの?』
「なにが」
『ケンチの気持ち…』
「奈々ちゃんに惚れてることか?」
『そう、奈々に惚れてること』
「当たり前だ、あんな分かりやすいのはケンチと直人くれぇだろ…まぁ一番分かりやすいのはタカヒロだけどな」
『………』
哲也くんがクッて笑った瞬間、あたしの後ろ、温もりが落ちて…
「本人がいねぇとこで悪口言うんじゃねぇって?」
大好きな、あたしの温もりに全身包み込まれた。
振り返ったタカヒロの顔は、少し青白い。
こんなになるまで色々駆けずり回っていたんだ。
『タカヒロ…』
「奈々、約束しろよ」
耳元を掠めるタカヒロの吐息は熱くて甘い。
後ろから強くあたしを抱きしめている―――
『うん?』
「勝手にいなくなるな」
『…ん』
「もう誰も代わりにはさせねぇし、お前を離す気もねぇ…俺の傍にいろ」
タカヒロの泣きそうな震える声に胸が詰まった。