■ 太陽みたいな笑顔5
「ドライブでも行く?」
『え?』
「まだ帰りたくねぇーって顔してる」
ピンッて痛くない程度にあたしのオデコを指で突くケンチ。
優しいんだね、本当。
『いいの?』
「俺でよければな」
そう言って太陽みたいな笑顔をくれたケンチ。
その笑顔に、胸が熱くなって…
泣きそうになった。
誰かを信じて裏切られる怖さを知ってしまったあたしは、正直優しさに慣れてなくて。
こんなあたしにも優しさを注いでくれるケンチと、これからもずっと友達でいたいと思わずにはいられない。
願わずには、いられない。
ケンチの優しさに甘えたあたしは、ケンチのバイクの後ろで、ただその温もりにしがみついていた。
『ありがとう』
「ええ?」
『ありがとう』
青倉庫から出たあたしは、ケンチがグルグル色んな道を通ながらも、学校の近くにある小さな公園まで来ていた。
「休憩」って言ってミルクティーをくれたケンチにそう告げた。
「初めて頼ってくれたよな、俺のこと」
『初めて…?』
「そ。奈々ちゃんいつも遠慮してるみたいに我が儘言わねーでいたけど、なんでかいつも淋しそうに見える。俺結構頼りになると思うんだけど、…ってずっと思ってた」
渇いた笑いを零すケンチ。
そんなこと思われていたなんて、思いもしなかった。