■ 太陽みたいな笑顔4
「奈々、ケンチは大丈夫だ。お前を残して死ぬわけねぇよ…」
緊急手術の待合室の廊下で、震えの止まらない膝を抱えるあたしにタカヒロがそう告げた。
何も考えられない…
ただ、ケンチの笑顔に逢いたい…
ただ、それだけ―――
それすら叶えられないというなら、神様の存在意味を疑ってしまう。
何も望まないから。
ケンチに逢わせて…
太陽みたいな笑顔で、「奈々」って…――――
…―――――
夢を見た。
あの日、タカヒロを好きだと気づいたあの日…
あたしはタカヒロの待つ家に帰れなくなったあの日…
唯一、助けてくれたのはケンチだった。
「奈々ちゃんそろそろ帰る?」
『うん…』
あたしを「元気ない」って言うケンチ。
oneに入ってまだ間もないあたしによくしてくれるみんな。
あたしがゆきみの友達だから、みんながあたしを受け入れてくれて、ケンチや直人は、いつだってあたし達の側にいてくれるんだ。
中学以来、友達を…人を信じることを諦めたあたしは、ゆきみに出会ったことで、それを克服しようとしていた。
毎日確信づけるみたいに、あたしを守ってくれるケンチを、あたしはもう信じている。
「ゆきみちゃんが帰ると静かになるな」
直人のバイクに乗ったゆきみが手を振って青倉庫からいなくなった途端、花が消えたみたいに静かになるここで、ゆきみの存在感は大きいんだって知る。
『うん、そうだね』
ケンチの言葉に笑うけど、そんなあたしにニコリともしないケンチ。
そーゆう目で見られると、心の中を見透かされたような気分になるのに。