■ 想い6
『哲也はわたしだけを想ってる。ノリはもう来ないよ』
「ほう、自信あんだな?」
ワタルらしさが戻ってきたのは、声だけじゃなく、その表情からも分かった。
自信に満ちた顔で真っ直ぐにわたしを見つめている。
『哲也を信じてる』
「そんな愛なんて簡単に崩れるもんよ」
まるで体験したかのような言い方だった。
元々そんなに好きなわけじゃないけれど、哲也や直人の吸う煙草の香りは、わたしにとって安心できるもので…
いつもと違う、ワタルの煙草に頭痛すらしてくる。
『崩れない何があっても、哲也の想いは変わらないって、そう言われた。絶対だって』
イヴの夜に哲也がわたしにくれた言葉。
悲しい思い出を、哲也自身の言葉ですり替えてくれたあの夜。
胸に刻まれたわたしと同じタトゥーが何よりの証拠。
「じゃあ見せてみろよ?」
『え…?』
「それが絶対だって証拠。俺に信じさせろよ」
ワタルの目が怪しく光った。
そういうワタルは、きっと人を信じられない可哀想な人なんだ。
だから幸せなわたし達が憎いのかもしれない。
それならば、わたしがそれを証明させれば…
『条件がある』
「なんだよ」
『奈々から手を引いて』
「…それはお前次第だ、ゆきみ」
罠かもしれない。
それでも親友に手を出されるよりかはマシだと。
わたしは哲也を信じてる…―――