■ 想い4


ワンコールですぐに哲也の声に繋がって。



『哲也ぁっ』


【ゆきみっ、どこにいるっ?!お前無事なのかっ?怪我してねぇっ?大丈夫かっ?ごめんっ俺っ、お前を一人にしてマジごめんっ】



吃驚するくらい哲也がテンパッていて、わたしに質問を飛ばしまくる。


愛しい人の声を聞いて、わたしの胸の中はほんの少し落ち着きと冷静さを取り戻すんだ。



『哲也…助けて…』


【絶対ぇ助けてやる!場所はどこだっ?!何が見える?】


『分かんないけど、ワタル達が薬使ってる場所。窓がなくてどこなのか…。それより、リュウジくんは無事?』



あんな風に別れたから、どうなったかずっと気になっていて…



【ああ、ピンピンしてる】



冗談ぽくそう言った哲也にホッとする。



『あのね哲也、奈々を絶対にワタルに渡さないで。わたしは大丈夫だから、奈々を守って!』


【心配すんな、でもゆきみは、命に変えても俺が守る。ワタルはそこにいんのか?】



たった一言、哲也のその言葉はこんなにもわたしを安心させてくれるんだって。


結局の所、わたしにとっての哲也はどんなことがあっても変わらず一番なんだ。



『うん、いるけど…』



そう答えながらも視線の先にいるワタルはただジッとこっちを見ているだけで近づいてこない。


でもその様子はやっぱりおかしいと思う。


わたしの電話を大人しく待つほどワタルは馬鹿じゃないと思うのに…



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