■ 想い3


『どうしてこんなことするの?』



涙ながらに言ったわたしに、ほんの一瞬ワタルの身体が反応した。



『奈々やわたしを抱けば気がすむの?』


「おい…」


『身体だけあげれば満足する?』


「………」


『気持ちは崩れないのに、虚しいだけじゃんっ』


「黙れよ!」



ワタルの怒鳴り声がこの部屋いっぱいに広がった。


肩で大きく呼吸を繰り返すワタルは、その綺麗な顔を汗が滴り落ちて。


初めて見るワタルの動揺にわたしはその手中にある携帯を剥ぎ取った。


直ぐさま哲也の名前を出して通話ボタンを押す。


ワタルはわたしの動きを目で見ていながらも、わたしを止めようとしなくて。


全く意味が分からない。


分からないけど、自由にされたことを嬉しく思うんだ。



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