■ 想い2


「薬なんて入ってねーよ」



呆れたようなワタルの声にわたしは視線だけをワタルに向ける。



「俺ってまーじ信用ねーのな」



ケラケラ笑うワタルは、それでも笑わない目をわたしに向けている。



「まぁそろそろ動くだろ、お前らのチーム。奈々に電話したらタカヒロがでたぞ」



シレッと言い放った。



『は、奈々に電話したの!?』


「かけただけだよ。出たのは奈々じゃなくてタカヒロっつったろ!電話、返してやろうか?」



突拍子のないその質問、信じちゃいけないけど…



『返してよ』


「いいぞ、ほら。取りにこいよ」



奈々とお揃いのストラップを摘んで揺らしているワタルの手に集中する。


ゆっくり立ち上がると、絶食のせいで足元がふらついた。


ググっと、ソファーの端に手をついて倒れそうな身体を整えた。


近づくわたしを舐めるように見ているワタルが憎くてたまらない。


数歩の距離をつめると、わたしの手に携帯が触れた。


でも、次の瞬間ワタルにすっぽり包まれるみたいに抱きしめられる。



『なにすんのよっ!?』


「奈々呼ばねーならマジで抱くぞ」



凍り付くくらいに低く冷たい声だった。


もう分かんなくて。


わたしがどうなったらいいのか、


どうすべきなのか…


何も浮かばなくて。


哲也に逢いたくて…



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