■ 着信9
「奈々…」
呼吸を取り戻したあたしの髪に顔を埋めるタカヒロの背中、そっと腕を回してタカヒロの温もりを確かめる。
「奈々…」
また、あたしを呼ぶ。
不意に顔を上げたタカヒロの瞳は、どうしてか切なくて…
あたしも泣きそうになってしまう。
「…ゆきみちゃん、絶対ぇ取り返してくっから…それまで少しだけ待ってろ」
ああ、やっぱり…
やっぱりそうなんだ。
『タカヒロ?』
見つめるあたしに触れるだけの小さなキス…―――
タカヒロがあたしの身体から離れた瞬間、ポロッと涙が零れた。
後ろ姿がボヤケて…
追いかけられない…
行かないで、タカヒロ…
あたしも一緒に連れていって…