■ 着信6


だから…


ほんの少し息苦しい胸を押さえてあたしは真っ直ぐにタカヒロを見た。



『おたふくはもう治ったから会いに行ってくる』



そう言うあたしにタカヒロは、1ミリも視線をズラすことなくあたしを見つめて…



「治った?」


『…うん、さっきメールきた』



そう言った瞬間、今度はその手中にある携帯が大きく揺れた。



¨着信 ゆきみ¨



しっかりとそう出ているあたしの携帯電話の画面。


ゆきみとお揃いのあたし達の好きな着ウタがVIP部屋に鳴り響いている。



「奈々、携帯貸せ」



威圧的なタカヒロの声にあたしは携帯を握りしめた。


くるっと向きを変えて通話ボタンを押して耳に宛てた。



『ゆきみっ!?』



耳に声が届く寸前、後ろから携帯を抜き取られて、反対側のタカヒロの手があたしをしっかりと掴んでいる。


片手であたしを抑えながら携帯を耳に宛てるタカヒロの目は怖い。


チーム【one】の八代目総長の顔で。



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