■ 着信4


「女?」


『路地裏にいた女の子。ケンチと直人が連れて行ったあの子は、あの後どうなったの?』



煙草を持つケンチの指がほんの少しピクンとして、灰が灰皿に落ちた。


動揺しているんだ、ケンチ。


ゆきみもあたしも敢えて聞かないでいたけど、何もかもが水面下では繋がっている気がしてならない。



「え、…」


『く、すり…やったって…あたしのせいで誰かに?』


「奈々違げぇー!お前のせいじゃねーぞ」


『ケンチ隠さないで。ゆきみはあたしの親友だよ。ゆきみ、どこにいるの?』



ケンチが困った顔で目を逸らした瞬間、VIPのドアが勢いよく開いた。







『タカヒロ…』



大晦日ぶり。


あたしを見て優しく微笑むタカヒロに胸がギュッと痛くなった。



「タカヒロさん、あの…話が…」


「…奈々、今年も宜しくな」



ケンチの言葉を無視して、あたしの頭にポンッて触れる大きなタカヒロの手の平。


新年の挨拶なんて今更…



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