■ 絶対ルール9
『用事?…そうなんだ。あ、ケンチは昨日大丈夫だった?』
「…あぁ」
『えっと…あ、ご飯食べよっか?ケンチお腹空いてるよね?』
「奈々の手料理かー。楽しみだな」
目を細めて笑うケンチにあたしはホッとしてベッドを出た。
冬休みだからお母さんは帰省していて、この家にいるのはあたしとケンチの二人きり。
親父は夏が終わりを向かえた頃、正式にお母さんと離婚して、今はもうどこにいるのかも分からない。
しばらくゆきみに泊まりにきて貰おうかな〜って思っているあたしは、着替えて朝食を作りながら色んな思いを巡らせていた。
『ケンチ、ごめん言うの遅れちゃった。…今年も宜しくお願いします』
簡単な和食を用意したあたしは、誰もいないからリビングにケンチを呼んでそう言った。
いつもタカヒロが座るその場所に座るケンチは「こちらこそ」って笑った。
『ね、ゆきみも一緒に初詣行きたいな。タカヒロの用事って時間かかるようなこと?』
たぶんケンチがここにいる時点で、タカヒロは中々帰ってこれないんだって思う。
思うけど…―――なんだろう、この空気。