■ Long Laod9
…―――のに。
そこにはゆきみも哲也くんもいない。
『タカヒロ、ゆきみ遅くない?』
あたしの問い掛けにタカヒロは眉間にシワを寄せた。
すぐに携帯を取り出すと誰かに電話をかける。
「俺だ―――ゆきみどこだ?………分かった」
『なんだって?』
「悪い奈々、拉致られた」
『ええっ?』
「哲也にだ!…二人きりにしてやろーぜ、年越しくらい」
『そっか、うん』
「俺だけじゃ不満?」
『まさか!嬉しいよ』
「んじゃ奈々ん家行こうぜ」
背中に腕を回されて、さっきの車に乗せられた。
「あいつらに伝えてくっからちょっと待ってろ」
そう言ってあたしに背中を向けるタカヒロ。
ゆきみに逢えないのは少し寂しいけど、ゆきみと哲也くんが幸せならいい…
そう思うんだ。
でも、その日以降…
いつまでたってもゆきみと逢うことはないなんて。
まだ、あたしは知らない…