■ Long Laod7
「タカヒロさん、ケンチさんから電話っす」
突然、静かだった運転手さんがタカヒロに自分の携帯を差し延べてきて。
なんだろ、この胸騒ぎ。
あたしの髪を優しく撫でながらも、タカヒロは携帯を受け取ると、そのまま耳に宛てた。
「どうした」
あまり聞くことのない低い声に、あたしは視線をタカヒロから離さなかった。
「…あぁ、分かった。哲也に伝えろ。ゆきみの安全が第一だ、そう言え」
胸がドクンとする。
タカヒロがゆきみを呼び捨てにするなんて、絶対にろくなことじゃない。
ゆきみに何かあったの?
携帯をパチンっと折り曲げたタカヒロを見てあたしはタカヒロの言葉を待った。
ゆっくりとこっちを向いたタカヒロ、あたしをギュッと抱き寄せた。
「奈々、車変えるぞ、暴走は終わりだ」
半分以上理解できないその言葉に、あたしは小さく首を傾げた。
でもあたしが言葉を発する前にもう、この車は止まっていて、ドアが開くとチームの子が心配そうにこっちを見ている。