■ 秘めた独占欲10
「哲也さん、時間です」
直人の言葉にわたしを離した哲也は、一歩直人に近寄った。
「邪魔してんじゃねぇよっ、たく」
パチンって直人のオデコにデコピンをする哲也に、その空気にわたしはホッとした。
今にも殴りかかってしまうんじゃないかって雰囲気だったから。
哲也がこうして空気を崩してくれたことが嬉しくて、わたしは頬を緩ませた。
「行くぞ」
わたしの肩を抱いて、哲也の暴走車に向かう。
わたしは振り返って直人に微笑んだ。
「妬ける」
『もっと妬けばいいのに』
「…かもな」
哲也の笑顔に、又心がスーッと軽くなったんだ。
一年が終わる最後の日。
どうかなにも起きませんように…