■ 秘めた独占欲6


「だよな」


『ごめんあたし、そんなつもりじゃなくて』


「いや、いい。奈々ちゃんの言う通りだし。俺じゃゆきみを連れてこれなくて…マジごめん」



普段の哲也くんからじゃ想像もできないだろう、チームの子の前ではとうてい見せないだろう、弱気モードの哲也くん。


あたしはたまにこんな哲也くんを目にする。


それはゆきみ絡みのことで。


喧嘩じゃ負け無しだと思われる哲也くんの弱点は完全にゆきみなんだって。


こうやって惚れた女のことで弱くもなってしまう哲也くんを、あたしは恥ずかしいとは思わない。


そこまで大事な相手に、この歳にして出会えている事が何よりだと思うんだ。


それはあたし自身にも当て嵌まることで。



見つめる先にいるタカヒロはやっぱり優しい笑顔をくれる。



「俺が一緒に行くよ」



タカヒロの手があたしの肩に回された時、青倉庫に見覚えのあるバイクが一台入ってきた。


一度はあたしの送り迎えの係だった直人のバイク。


忘れるわけもない、直人のバイク。



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