■ 闇の扉7


不意に、路地裏に響き渡る女の悲鳴に、わたし達は一瞬にして視界を奪われた。


ケンチと直人に両方から支えられているというのに、尚もまだ、暴れようと足をバタつかせていて。


わたし達の元にゆっくりと近づいてくる。


わざと見えない用にわたしの前に背中を向ける哲也の腕をギュッと握りしめた。



「ケンチさっさと車乗せろ」



そう言うタカヒロの言葉に、ケンチは無言で頷いてわたし達の前を通り過ぎる。


哲也の後ろから見える女の目は焦点があっていなくて、挙動不審。



ワタルが捕まる前に、同じような人を一度だけ見たわたしは、目の前の女が薬を打たれたって勝手に確信した。



『あんたらのせいだ!』



車に乗せられる寸前、リキの女はわたしと奈々を振り返ってそう叫んだ。



『なに…が…』



困惑した奈々の隣、わたしは直人に視線を送ると、車の中からしっかりとわたしを見ていて…



『あたしのせい?』



奈々の言葉に「ちげぇ!」って叫ぶ、ケンチとタカヒロの声が無駄に重なり合う。



『ワタルの仕業って事なんだ。わたしや奈々が出て行かないから他の女ヤッちゃうんだ!警告だって、そーいうことっ?!』



冷静に冷静に、感情的にならないように言ったつもりなのに、わたしが出した声は悲しくも震えていて。



「それ以上言うな」



哲也の冷たい声が、わたしに届いた。



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