■ 闇の扉6


『あの子はチームの子なの?』



隣で奈々とタカヒロが喋っている会話ですら、わたしの耳には客観的に聞こえた。



「そう、配下のFIVEっつーチームの頭がリキって奴で、そいつの女。今FIVEがこっち向かってる」


『どうしてあんな目つき…』


「知りてぇの?」


『………』



即答できない奈々の気持ちもよく分かる。


死人のような目をしたあの子の正体を知ってしまうのが怖い。



『あれもワタルの仕業?』



小さなわたしの呟きにピクッと哲也の頬が動いた。


でも哲也の答えなんて分かりきったもので。



「心配すんなって」



期待を裏切らない哲也の言葉にわたしは拳をギュッと握りしめた。


悔しさを手に込めてジッと冷静さを整える。


こんなに側にいるのに、心が通じ合っていなきゃ何の意味もない。


こうやっていつまでもわたしに何も言わない哲也を、これからもわたしは愛していける…―――?



- 88 -

prev / next

[TOP]