■ 闇の扉4
『タカヒロ?』
【5分で行くから動くなよ】
『うん』
何か、ヤバイ気がした。
普段動かないタカヒロが動くのは、あたしやゆきみが関わっている時ぐらいしかなくて。
それ以外は哲也くんであり、ケンチであり、直人が動くのに…
今回はタカヒロ自ら動いたって思うと、この出来事が何なのか不安が押し寄せた。
これがあたしやゆきみの知らない水面下の隠し事だとしたら、あの女は何者なんだろうか。
直人一人であそこにいて大丈夫だろうか。
そんな直人に視線を向けると、女の服を脱がせていて…――――
って、えぇっ!?
あたしもゆきみもビックリして、思わず二人一緒に直人の方に向かって走り出した。
その足音に気づいてか、「来るなっ!」…静まり返った路地裏に直人の怒鳴り声が響いた。
その場で立ち止まった瞬間、その女がこっちに視線を向けた。
『ひぃっ…』
ゆきみの腕に痛いくらい絡み付くあたしは、身体が震えるくらいの恐怖を感じる。
虚ろな目は、開いているものの生きているとはいえない生気を失ったもので、焦点すら合っていない。
顔は…っていうか、全体的に痩せ細っていて、例えるのなら¨死人¨。
『ゆきみ、あの人怖いよ』
『奈々…』
あたし達は、その場所から進む事も下がる事も出来ずに、ただ立ち往生するだけだった。
強く、強く、願うだけ――――
――――タカヒロ早く来て――――