■ 闇の扉2
目で追う直人はゆっくりその人に近付くと、いきなり大笑いが路地裏に響き渡った。
ビクッとした瞬間、隣のゆきみが更にギュッと手を握って、あたしもそれに答えるようにゆきみの手を握り返した。
壁にもたれて座っているその人の前で直人がしゃがみ込んだ。
『なによっ?来ないでよって、言ってるじゃないっ?』
何だか呂律の回っていない喋り方のその人は、どうやら女の人のよう。
髪を引っ張り上げて顔を覗き込む直人は、その人が怖くないんだろうか?
「お前何してやがる」
直人の低い声に、思わず鳥肌が立った。
『奈々、わたしあの人見た事あるよ』
強張ったゆきみの声にあたしは首を傾げた。
『あれ確かどっかのチームの女…』
眉間にシワを寄せて考えるゆきみを見ていたら、耳元でケンチの声が聞こえた。