■ 心奪7
それでもちゃんと直人は受け止めてくれるってそこまで分かっていてそう言うわたしは、ただの性悪女なんだと。
直人を一番にできないくせに、直人にはわたしが一番であって欲しいなんて。
わたし以外の女に興味を持ってほしくないなんて。
―――どれだけ勝手なんだろう。
「ゆきみ…」
ほらね、ほら。
わたしの髪を撫でる手がそっと頬に落ちて…
「ゆきみ以外興味ねぇって言ったはずだ。俺の事信じらんねぇ?」
哲也みたいな声で、哲也みたいな言葉遣いで囁くんだ。
耳元に唇を寄せてそっと触れる。
ズルイのはわたし…―――
直人の優しさを独り占めしたいだなんて。
哲也を忘れた訳じゃないの。
何があっても哲也はわたしのものだって言葉を忘れた訳じゃない。