■ 心奪4


『あの、ケンチ…』


「惚れた女に可愛いなんて、ダセーよ」



吐き出すみたいなケンチの声に心拍数が上がっていく。


気づいたら前を歩いていたゆきみの姿がない。


見つめ合うあたし達…


ケンチの真剣な目は、あたしの扉を確実にノックしている。



「奈々は俺が守るから」



捕まれた腕を引き寄せて、簡単にあたしはケンチに抱きすくめられてしまう。



「何かあったら言えよ」


『…うん』



あたしはどうしても、ケンチを拒否できないんだ。



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