■ 心奪3


『ケンチ何が分かったの?』



廊下を歩くあたし達。


前を歩くケンチにそう声をかけると、苦笑いで振り返った。



「ここで聞く?」



困ったケンチの顔が可愛くて。


あたしはケンチに笑顔を飛ばす。



『ごめん、冗談…ケンチやっぱ可愛い』



背の高いケンチの清潔な黒髪に触れようと伸ばしたあたしの手、空中でパシッと捕まった。


え?


ゆっくりとケンチに視線を移すと、さっきのゆきみと同じくらい頬を赤くしたケンチが真剣にあたしを見ている。



「可愛いなんて言うなよ、お前」



低いケンチの声と、痛いくらい強く腕を握るケンチの想い…


真剣な表情に、思わず胸の奥がカァッと熱くなった。



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