愛してるって言って | ナノ





初出勤1




CLUB ISLAND

そこは誰もが夢見る世界。

美味しいお酒と綺麗なキャストたち。

通う人はそれぞれ。

角界のセレブだったり芸能人だったり、有名企業の上役だったり、ヤクザだったり…。


出勤初日、私はサクラさんに一冊のミニノートを渡された。


「これ?」

「営業ノートよ」

「はぁ…」

「そこにお客様の背格好、年齢、趣味、お酒の好み、その日話した話題、約束事、職業、連絡先…気になったことを全部書き出すの。それを完璧に頭に入れた上で仕事ができれば、完璧よ」

「分かりました、頑張ります」


気合いを入れた私。

結局昨日あれから美容院に行って、生まれて初めて髪を染めた。

金色に近いリンさんとは違う、赤めの落ち着いた色。

歳相応に見られちゃ困るから、少しでも大人っぽく見せたいって言ったら、落ち着いた色を勧められた。

そのままネイルもして、こんな風に自分の身体を磨くことは初めてで、意外とそれが楽しいんだってことに気づいた。

女ならではの特権なんだって。


お店に入った私はケンチさんにヘアメイクをして貰ってドレスに着替えて、そして私を呼びに来たのは、ナンバー入りしている私の指導係のサクラさん。

今日も明るいオレンジ色のロングドレスを纏っていてすごく綺麗。

ちなみにナンバー1のドレスの色は今日も紫って書いてあった。

同伴出勤らしい彼女はまだお店に姿を現していない。


「おう、アイラ!」


フロアに向かう私、腕を掴まれて立ち止まった。

振り返った先には、アキラ。


「アキっ…とと…オーナー、おはようございます!」


危うく呼び捨てにタメ語をかます寸前でカレの目が一気に私を睨んだ気がしてそれを思い出した。

切り替えが難しい…と思いながらも、心の中で何度も“オーナー”を繰り返す。




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