居場所1 私と藤堂に気づくことなくそのまま奥の個室に姿を消した。 薄暗い店内。 さっきまでドアが開いていた為サワラ達が見えたけど…ナオトがドアを閉めたせいで中の様子も何も分からない。 そんな私に追い打ちをかけるかのよう…そのドアが再び開いたと思ったら、出てきたのはサワラと一緒にいたタワーを頼んだ客。 個室の中は、サワラとナオトの二人っきりになった。 じっと、気づかれないように出てきた客の顔を見て…――――「あ…」思い出した私…。 「アイラちゃん?」 思わず呟いたその声に反応する藤堂。 私の顔を覗き込んでいる。 グラスを持つ手が震えてしまって… 真実なんて今の時点では何も見えてないのに、それなのに私の心はナオトへの疑いの心でいっぱいだ。 自分を棚にあげて、ナオトとサワラの仲を疑っている。 「どうかしたの?顔色が悪いよ?」 心配そうに私を見る藤堂の肩に寄り添って耳元で小さく声を出した。 「藤堂さん、今お会計してる人…知らないですよね?」 「会計?」 チラリと私越しにあの客に視線を向ける藤堂。 「見たことないかな…あの人がどうかした?」 「いえ、なんでもないです。気のせいだったみたい。このお店よく来るんですか?前もこういうバーに連れてきてくださいましたよね?」 「ああ、わりとよくね。時々接待とかにも。個室でだけど」 「そうですか」 たわいない話を繰り返す私の神経はずっとあの奥の個室。 いつナオトが出てくるのか。 いつサワラが出てくるのか。 そればっかりが気になって、藤堂の話の半分も聞いてられない。 でも、私たちのアフターが終わる時間になっても、奥の個室は開かなくて…。 仕方なく外に出た私たち。 「ねぇ藤堂さん。あの個室って中どんな風になってます?」 「え?ああ、あの個室はねぇ特別で。これって一部の奴しか知らないと思うけど…。まぁ色んな場に使われるから、裏口に繋がってるっていうか。店を通らなくても外に出れるし、上のホテルに行くこともできるよ!勿論俺はそんな使い方はしないからね?」 「…本当ですか?信じていいの?」 「当たり前だろ。アイラちゃん以上の人なんていないよ」 「嬉しい!」 腕にしがみついてニッコリ微笑んだ。 タクシーに乗った私を見送る藤堂に手を振って、私は一人タメ息をついた。 |