弱いいきもの1 何だか気持ちも心も何もかもが置いてきぼりで追いつかなくて… 「ケイジごめん…今日は帰りたい…」 泣きながらそう言う私を抱きしめていた腕の中から離してくれるケイジ。 私の頭をスッと撫ぜて…「無理やりしねぇって言ったろ?送るか?」見つめる瞳も、奏でる口調もこんなに優しいのに、胸ばかりが痛い。 首を横に振って立ち上がった私を玄関まで送ってくれるケイジ。 「そんな困った顔させたいわけじゃねぇんだ俺…」 後ろから聞こえた声を、聞こえないフリして私はケイジの家のドアを開けて外に出た。 どうしたらいいんだろう…。 携帯の電源を入れたらすぐにナオトから着信があった。 「…もしもし」 【ユヅキ…】 「うん」 【ごめんやっぱ心配で…俺んとこ来てよ?】 「…ナオトッ…ごめん…ごめんねっ…――――逢いたい…」 【どこ?どこにいる?すぐ迎えに行くから!】 「…ごめんね…ナオト…―――ケイジのマンションの前…」 【え…店長の…なんでっ…】 「ごめん、ごめんね…――逢いたいのナオトに…」 正しいことと、間違っていることがどれだか分からない。 答えが見えなくて…――― 切れてしまった携帯片手に、その場に崩れ落ちた。 冷たい風が肌を身体を刺して通り過ぎていく。 答えを出せないくせに、みんなに縋り付いてしまうなんて、こんなにも人間は弱い生き物なんだと。 男に捨てられて泣いていた母を思い出した。 幼いながらに父がいてくれたら…と何度も思ったんだ。 物心ついた時から母と二人だったから、父がどういう存在なのかすらも分かっていない。 けれど、どこかで父を求めていた自分がいて… 「タスケテ…―――」 苦しくて涙が余計に溢れてくる。 立ち上がることもできずに蹲る私に、遠くから聞こえたバイク音。 バババババババババ… 目の前で停まったバイクに顔を上げると、思った通りナオトだった。 私の腕を引いてメットを被せると、抱き上げられて後部座席に座らされた。 そのまますぐにナオトのお腹に腕を回されて、片手で私の腕を上から押さえつけながらナオトのバイクが走り出した。 ナオトの背中は大きくてとても温かくて…どうしてこの手を放してしまおうと考えてしまったのかも分からなくなった。 |