愛してるって言って | ナノ





オーナー1





連れて行かれたのは、高級マンションらしき建物。

最上階のそこ、1501号室は黒と白を貴重にしたまるでスイートルーム。

私をここに連れてきたのは、さっきのヤクザが紹介した“こいつ”様。

黒沢アキラと名乗られた。

黒地に紫色の文字で書かれた名刺には「CLUB ISLAND」オーナーと書かれている。


…クラブアイランド?

なんだそれ?


さっぱり意味が分からないけれど、ピンク街にいたし、ヤクザと知り合いって時点であまりいいお店ではないと思われる。

オーナーって肩書きはその店の経営者ってことだから、まぁ偉い人なんだなって。

長身のこの人は、笑うと目がなくなってちょっとだけ可愛い。

見た目はチンピラというか、あのヤクザと対した変わりはないものの、この人はよく笑う。

優しい目で笑ってくれる。

だからか、どうしてか恐怖感がなかった。

普通ならこんな人に家を提供して貰って、働き口まで紹介して貰ったら、変な見返りがあるんじゃないかって思う。

絶対に、思う。


「警戒心ゼロだねぇ、お前」


それが顔に出ていたのか、クシャって髪を触られた。

自分でもおかしいって分かってる。


「そうみたいです」

「変な奴」


でも、その部屋を見た瞬間、一気に警戒心が溢れてきた!


「ここ寝室ね」

「え、待って下さい!」

「なに?」

「ここって黒沢さんの寝室っぽく見えますけど?」

「そうだよ」

「失礼ですけど、私の寝室は別にないんでしょうか?」

「ほんと失礼だねぇ、ないよ、そんなの」


ウソつけよ!

こんなだだっ広い部屋で客室にベッドも…


見回してもベッドの置いてある部屋はここだけ。


しかも特大ダブルベッド。

こんなベッド、ドラマや映画でしか見たことない。

こんなベッドで寝てる人間、本当にいたんだ。


って、話がズレてる!




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