愛してるって言って | ナノ





哲也さんの焦り1




「あーあ、せっかくの楽しい時間邪魔しないでよねぇ〜」


余裕な顔でテツヤさんに緩く言葉を飛ばす榊原。

そんな榊原をジロっと睨むテツヤさんは絶対に私を離してくれなさそうな雰囲気。


「テツヤさん」

「黙れ」

「っ…」


テツヤさんに本気で怒られて口をつぐんだ。


「榊原何がしてぇんだ?」

「別に〜。レイラの苦しみとってあげたいだけよ、俺は」


榊原の言葉にチッって舌打ちを鳴らすテツヤさん。

私を引き寄せた腕を私の肩に回して距離を埋める。


「こいつには何の関係もねぇんだ。構うんじゃねぇ。組動かされてぇのかよ?」

「もうそんなにカリカリしないでよ。こんなの遊びでしょ、遊び!」


ニヤリと口端を緩めていやらしく笑うんだ。

それが更にテツヤさんの怒りを買うようで…また舌打ちが届く。


「テツヤさん」

「…知りたかったら俺が教えてやるから、こんな奴に聞くなよ?」

「うん…」


素直に頷くと、ちょっとだけ頬を緩めるテツヤさん。

そのまま私の肩を抱いてフロアを横切っていく。

テツヤさんと入れ替わりでケイジが榊原をお店から出口まで誘導して行った。


「何聞いた?あいつに…」


私をフロアから離れた別室に連れていってテツヤさんが真剣にそう聞いた。

そんなにみんなが焦るようなことを聞いたわけじゃないと思うのに、どうしてみんな何かを隠しているような感じなんだろうか…。


「オーナーとレイラさんのことを少し。アキラが…レイラさんを私に重ねているって…。でも私と逢ったのは最近で…どうしてか分からなくて…そしたら私とテツヤさんが…って所までです…」

「俺とお前が…の先は聞いたの?」

「いえ。そこまでです…」

「そうか…」


ホッとしたような表情を浮かべるテツヤさん。

私とテツヤさんが一体なんなんだろう?

気になって仕方ない。


「あのテツヤさん…」

「ん?」

「私たちって…」

「…もう少し待って欲しい。その時になったら全部話すから。それまで俺を信じて…」


やっぱり教えてくれないんだって、ちょっと悲しくなった。

だったら…――――

藤堂とのアフターを急遽断った私は、久しぶりにケイジの送りだった。

一日で色んなことが起こり過ぎて頭の中がパンクしそう…。


「ケイジ、どこ行くの?」


車の行先にそう聞いた。


「俺ん家」




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