出禁の男1 「何かあった?」 「え…?」 タメ息をついた私を見て、健ちゃんが近寄ってきた。 あの日以降、健ちゃんは何ていうか私をよく見てくれていて…。 「ないよ、心配性だなぁ」 「アイラちゃんってどうしてかほおっておけないんだよねぇ〜」 「ははは、私子供か!」 「何もないならいいけど、何かあった時はマジでボクに言ってね?」 「うん、ありがと」 私のメイクをささっと終えて健ちゃんがギュっと私をハグした。 これももう、お約束。 挨拶みたいに私を抱きしめる健ちゃんの温もりが、いつの間にか当たり前になっていったなんて。 「絶対こっちに残ってね?ボクを一人にしないでね?」 健ちゃんが何を抱えてそう言っているのかよく分からないけれど、そうやって私を頼りにしてくれることもやっぱり嬉しいんだ。 「うん!約束する!じゃ私、行ってきます!」 健ちゃんの腕の中から離れて香水を振りまくと、ISLANDのアイラに変わる。 広いフロア内がざわざわとしていて、奥の一番いい席ではナンバー1のリンがシャンパンタワーを貰っていて… 「すっごいアレ…」 思わず口をついて出たその言葉、後ろからゾクリとするような声が重なって…――――「もっとすげぇの頼んでやるよ!」そう言われて私の手を握られた。 振り返った私の前にいたのは… 「榊原リュウ…」 「へぇ、覚えてくれたんだ?そりゃ自己紹介の必要ねぇな。今日はお前を指名だ」 肩を抱かれて席に連れて行かれる。 ケイジ!! 顔だけ振り返る私に慌てて駆け寄ってくる黒木店長。 「榊原テメェ、出禁にしたはずだろ、コラァ!」 ド低い声で私の肩に回されたその手を振り払った。 途端に榊原のお付きの人がケイジを囲んで… フロア内がまたざわついた。 「あれ〜?黒木ケイジそんな態度とっちゃっていいわけ?」 全く動じない榊原にケイジが目の色を変えた気がした。 グッと唇を噛み締めて、拳をギュっと握りしめている。 「アイラ、俺につけよ。お前の一番知りてぇこと、全部教えてやるよ」 「…え…」 「オーナーアキラと…レイラのことについてもな」 ドキンと胸が高鳴る。 知りたいのはやまやまだけど…―――――「アイラ、ダメだ」ケイジの声が私に届く。 |