苦しいほどに1 「なにこれ…」 「なにって、全部お前宛てだよ…」 入口に並べられているその花束を見てケイジが言った。 その瞳が何を訴えているのか私には分からなくて…そんな私をケイジの腕が掴まえた。 「テツヤに何された?」 「え?」 「テツヤだろ」 「ケイジ?」 「俺は頼ってもらえねぇのな…」 そう呟いた声が至極切なくて私は胸が痛い。 そんな顔、ズルイよ。 でも、私にはどうすることもできなくて… 「あの私…」 「アイラさん!ああ指名いっぱいいっぱいですよ!店長何してんすかっ? 油売ってないで付回ししてくださいよ!」 黒服のナオトくんが私達を見つけてかけてきた。 慌てて私の腕を離すケイジは「悪り」そう言って、ツカツカと靴を鳴らしていなくなった。 ホッとしたのか緊張していたのか、私の心臓は激しく脈打っていて、そんな私にナオトくんが「どうしたの?」そんな質問。 キス以来、若干避けていた私だけれど、ナオトくんの方は全然そんな気も見せずに変わらない態度で接してくれて… そんなだからちょっと嬉しくなった。 「ナオトくん…ごめんね」 「へ?なにが?」 「何でもない!ふふふ」 ポンってナオトくんの腕を軽く叩くと、私の肩に腕を回して耳元で言うんだ。 「今夜俺とアフターしない?」 それが冗談だって分かってる。 そうやってこの場を和ませてくれてるんだって。 それがナオトくんの優しさだって… だから「考えとくね」そう言うと、「マジでどっか連れてってあげるよ」そう言って、私の頬にチュっとキスを落とす! それがくすぐったくて、ナオトくんの腕をもう一度軽く叩いた。 そうして、一歩フロアに入るとすぐにナオトくんも真剣な仕事モードな顔に戻って… 「つかマジすげぇな、ほんとに…」 店先に並ぶドデカイ花束をチラリと見つめた。 「ユヅキ! 新規だけで8組いるぞ。気合い入れてけよ?」 ケイジの言葉に私も気合いを入れる。 大きく深呼吸をしていざ、フロアに一歩足を踏み出そうとしたら、後ろから腕を引っ張られた。 同時に香る香水に振り返らなくても胸がドキっとする。 |