消毒1 それから毎日テツヤさんは私を同伴してアフターに誘い、店では指名をしてくれて… 一週間酒に溺れたせいで、二週間が過ぎた頃には、ぶっ倒れなくなっていた。 私のお客は、ほとんどがテツヤさんが回してくれたお客様で。 この界隈を牛耳っているという土田組は、こんなにも力を持っているんだと思うと、そのトップにいるテツヤさんって人が、どれだけすごい人なのかと思うものの、私の前でのテツヤさんは、まるで少年みたいに笑う人で、ヤクザであるということすら、たまに忘れそうになる。 それをテツヤさんに言ったら「それでいいよ、お前には」なんて笑った。 「アイラさん、指名入ってます、いけますか?」 黒木店長が私の横に膝まづいてそう言った。 チラリと視線を移す私の耳元「場内指名入ってます、リンさんのとこ」そう言って視線を誘う。 「え、リンさん?」 「ええ、どうします?」 「勿論いきます!」 「ナオト、ご案内を」 「はい、アイラさんどうぞ」 黒木店長の言葉に、黒服のナオトくんが私の背中に腕を回して誘導してくれる。 「アイラさんだいぶ慣れましたね?」 小声でそう私に言うナオトくん。 ナオトくんは、私の送り担当らしいけど、テツヤさんのアフターが毎日入っているから私がカレに送ってもらったことはまだ一度もない。 だからか、そんな理由でからかうように私によく話すようになって、最近はこうして移動の度に話しかけてくれる。 「そうでしょ! ね、リンさんのお客様の場内って…」 「あぁ、岡村さま。あの人この街のチーマーですよ。あまりタチがよくないんで、お触りとかなんかあったらすぐ俺に言って下さいね、殴ってやりますよ」 「頼もしい、ありがと」 「お礼はチューで」 「お断り!」 「チェー」 「ふふ」 気が紛れるなぁ、ナオトくんって。 ボーイを仕切っているナオトくんは、すごく目ざとくて、本当に頼りになる。 テツヤさん以外のお客様につくことの少ない私を、心配してくれているのが分かった。 「失礼します、アイラさんです」 黒服のナオトくんが横で膝をついて頭を下げた。 |