愛してるって言って | ナノ





優しいヤクザ1




テツヤさんと一緒に同伴…といってもずっと私と一緒にいるだけで、こういうのって同伴っていうの?なんて疑問。

そもそも同伴自体、体験したことのない私。

サクラさんから聞いた話はそう、軽いデートみたいなもん。

ただ、お店の前で待ち合わせして、そのまま同伴何人も掛け持ちする人もいるって。

それが…


「じゃあ俺店行くわ〜」


ポンって私の頭に手を乗せて立ち上がったケイジ。

続くアキラも「じゃあね」って私の頬に指を掠めて…

それは正直ドキっとした。

こうして異性に優しく触れられることの心地良さを、私はこの数日で確実に覚えた。

…玄関まで送っていく私に振り返ったアキラに「今日は倒れるなよ?」って軽く言われた。


「…はい」


たった一日でお酒が強くなるわけもなく、飲みすぎた私は今日もお酒を身体に入れるのかと思うと全てが憂鬱だった。

辛うじて俗に言う二日酔いとか、吐きまくるとか、そういうのがないだけよかった。


「テツヤさん、同伴私初めてなんですけど…どこか行きますか?」


まるで自分の家のように寛いでいるテツヤさんにそう声をかけると、プって笑った。

アキラは勿論、ケイジもテツヤさんも煙草を吸っていたので、この部屋はかなり煙たい。

私も煙草ぐらい吸えたほうがかっこつくのだろうか?

隣に座ってテツヤさんの煙草に手を伸ばす私に、優しい視線が降りてくる。


「吸いたいのか?」

「んー…そうじゃないんですけど…キャストの皆さんわりとみんな吸ってるんで、私も吸えたほうがかっこつく? って」

「よせよ、お前には普通でいて欲しい」


私の手中から煙草を奪い取るテツヤさん。

どうやらヤクザは普通の女が好みみたい。


「それはテツヤさんの好み?」

「まぁ、そんな感じ」

「なるほど。じゃあ吸いません私」

「そうしろ、そうしろ! 煙草なんて吸わねぇでもナンバー1は取れるぞ」

「テツヤさんがナンバー1にしてくれるんでしょ?」

「してやる! オレの枕やるか?」


ドキっとする。

首に腕を回されて…

テツヤさんにしては珍しく色気を飛ばしてきた。




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