愛してるって言って | ナノ





決意3




「今日はアフター入れんな」


そう言ったアキラの言葉に従った私は外の送り駐車場に行ったものの、そこにいたのは送り担当のナオトくんじゃなくって、何故か運転席から私を呼ぶケイジ。


「なんでケイジ?」

「は?」

「だって私の送りってナオトくんでしょう?」

「ああチェンジ。ナオトは手早いから危険だって…」


運転席のケイジは加え煙草に黒縁眼鏡。

最近黒縁眼鏡がお気に入りらしいケイジは、ちょっとだけインテリっぽく見えている。

それを言ったら「頭良さそうだろ」って笑ったんだ。


「危険って…どっちが!」


思わず思い出してしまうアキラの酸欠キス。

ナオトくんにされたのとはまるで大違いだったような気がするけど。

自分を棚にあげて何て人よ!!


「俺が送りオオカミにはならねぇって、なぁ?」

「な! …ケイジまでやめてよ」

「俺が本気でお前取りにいったら、アキラもテツヤも手出させねぇ。一緒に罰金払うか?」


冗談やめてよ…。

運転席をチラっと見ると、明らかに口端を上げて楽しそうなケイジ。

でも、正直ちょっと落ち込んでいたから今はこんな冗談でも有難いかも。


「ケイジと付き合ったらどんなメリットがあるの?」

「は、お前なぁ〜…。付き合うにメリットも何もねぇだろ! あるのは愛だ、愛!」


冗談だって分かっているけど、ケイジの口からそんな言葉が出てくるなんて思ってもみなかった私は、思わず吹き出してしまって、ちょうど赤信号でケイジが車を止めたから顔を向けたら…―――

後頭部で固定された腕に、強引に引き寄せられて、甘いケイジの唇が簡単に私の唇に重なっていて…

強引に私の唇を割って入り込む舌に、ドキンと胸が音を立てた。

抵抗したいのに、お酒のせいかしまりがなくって、唾液が顎のラインを滴り落ちる程に、激しく口内を濡らすケイジのキス…―――

頭の芯がボーっとして身体の力が抜けた瞬間、プップー…後ろの車からクラクションが鳴らされた。

チッて舌打ち音と同時、ケイジが運転席に戻っていく。

軽く放心状態の私の髪をそれでも手を伸ばして撫でるケイジ。


何も言わない。

今のは…マジキスですかい?!


今更恥ずかしくなって頬を両手で包み込んだ。




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