愛してるって言って | ナノ





決意2




「お前の望みは全部叶えてやる。けど理由があるならちゃんと言え」

「…ISLANDの二号店が出るんです」

「ああ、アキラから聞いてる」

「今のお店のナンバー2を二号店のナンバー1に迎えるってオーナーが。それって屈辱じゃないですか。結局2番は2番で…。だったらみんなナンバー1取ってこの店に残ればいいって…そう言ったんです。“横暴だ”って言ったら“新入りは口出すな”って言われて…でも結局リンさんもオーナーも、ナンバー1取りにこいって……私二号店には行きたくありません。ここのスタッフさんが好きだし、ここでナンバー1取りたいんです…だから…―――」

「俺の枕?」

「…はい」

「ユヅキ」

「はい」


一旦私を離すテツヤさんは、いつにも増して真面目な顔。

綺麗すぎるその顔を少し私に近づけた。


「ほんとにいいのか?」

「………」

「俺専属の枕になんてなったらお前、こっちの世界に片足突っ込んでるようなもんだぞ。俺の女ってだけで誰かに命狙われたりもするかもしれねぇ…それでもやるのか?」


テツヤさんの言ってることはよく分かる。

サクラさんが言っていたこととリンクするみたいに、枕やったら女扱いされるんだろうし、ましてやヤクザの枕なんて考えただけで鳥肌たつし、恐ろしい。

本当に命を狙われちゃうのかもしれない。

でも…―――


「私、失うものもないから…大切なものとかそういうの…ないから…」

「淋しい奴だな、たく」


フワってテツヤさんの手が私の頭を抱えるみたいに抱きしめた。

トクン…トクン…って規則正しく音を立てるテツヤさんの心音が心地良くて、私はそっと目を閉じた。


「それが私ですから…」

「分かったよ、お前を上げてやる、何が何でもな!」

「…ありがとうございます」


顔を上げた私に、テツヤさんの優しい笑顔が映った。

どのみち命なんて一度は捨てたようなもん。

ならば、私を生かしてくれた、私を拾ってくれたこのテツヤさんに預けたってかまわない。

そう思ったら気持ちが楽になって…


この日の私の売り上げは、前祝でテツヤさんにプラチナを入れて貰ったから、一番だったんだ。




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