愛してるって言って | ナノ





ミーティング1




「はいはい」


いかにも面倒くさそうなケイジの声。

でも、私を見つめるアキラの瞳はちょっと不機嫌で、そして強い。


「ユヅキ、早く来いって」


そう言いながらわざわざ私を迎えに来るアキラの一歩は大きくて、長い脚が近付く度に胸がキュっとする気がした。

私の腕を掴んで引き寄せるアキラは、私の腰に腕を回して耳元で「お前今日アフター入れんな」そう呟く。

それって、前も言われたけど…?


「どうして?」

「どうしても」

「…でもテツヤさん」

「断ってよ」

「…分かった」


私の言葉に少しだけ納得顔を見せるアキラは、スタッフルームのドアに入る寸前、私の腰から腕を離して、さっさと中に入って行った。

…なんか、照れる。

内緒にしているみたいなその行動が妙に照れて、そんな私を分かっているのか、視線を私に移してほんの少しアキラが満足そうに笑ったんだ。


ミーティングは、思った通り、ISLAND二号店の話だった。


「とりあえずナンバー1はこっちに残す。ナンバー2を新店に移動させて、そこでナンバー1やって貰う。友達とか使えそうな子がいたら片っ端から面接するから、オレかケイジに声かけて。使えそうならすぐにでも研修入れるから、スズ頼むね」


アキラの声がISLANDナンバー2のスズに飛んだ。

でも、スズは心底嫌そうな顔で…。


「本店でダメだったからって新店でナンバー1なんて、ちょっとふざけてません?」


まさかのオーナーに食ってかかった。

でも、その質問に答えたのはアキラじゃなくて…


「あら? こっちでナンバー1取ればいいんじゃないの?」


まるで余裕とでも言うよう、はたまたバカにしているとでも言うよう…


「リン!」


怒りをあらわにしたスズの声が、リンに刺さった。

確かにリンの言う通りかもしれないけど、そんな言い方ってない!

そう思った私の耳に届いたのは、残念なアキラの声だった。




- 46 -

prev / next


TOP