愛してるって言って | ナノ





噂2




確かにテツヤさん同様、アキラも最近は忙しいらしくて、マンションに帰って来ない日も多い。

リンと色恋じゃないってアキラの言葉を、私は信じようとしているのか、アキラがいないわけを何とも思っていなかった。


「それでね、キャストを増やすのは勿論、売上でお店別れさせられるみたいで…。ここに残るのか、新店舗に移動させられるか、来月からの売上で決められちゃうみたいよ」

「そうなんですか」

「たぶん今日のミーティングで言われると思うけど」

「サクラちゃん詳しなくな〜い?」


そこで健ちゃんの突っ込みが入って、私は思わずサクラさんを見た。

言われてみればそうかも。

そんな話私だって知らないのに、サクラさんが知ってるなんて…

見ると、サクラさんは気まずそうに目を逸らした。

持っていた煙草を灰皿で潰すと逃げるみたいに「お先」そう言ってメイク室を出て行ってしまった。

呆然とその後ろ姿を見送る私と健ちゃん。


「まぁ古株だしね、オーナーに相談でもされたのかもね」


ポンポンって健ちゃんが私の頭を小突いて笑った。


「うん、そうだね」

「はい、できた!」

「ありがとう!」

「うん、アイラちゃんはオデコあげた方がずっと可愛いいよ」


いつもオデコ全開にする健ちゃんは、その人に合わせて色んな髪型にアレンジしてくれる。

健ちゃんにそう言われると私も嬉しくて…。

以前の私ならオデコを出すなんて考えたこともなかったのに、今はこのスタイルがわりと気に入っていた。


「へへ、ありがとう。今日は何色にしよっかなぁ〜。リンさんは…っと…」


ロッカーを開けてドレスを選ぶ為にナンバー1のドレスの色を確認する。


「へぇ〜ピンク…。珍しい」


そう呟いて私はアキラが気に入っているパープルドレスを手にした。


今日はミーティングだからアキラも来るだろうしこれぐらいは構わないよね!

そんな風に一人でニヤってしていた時だった。

コンコンってメイク室をノックする音。

片付けをしていた健ちゃんが「はいは〜い」ってパタパタ入り口に走って行ってドアを開けた。


「見てこれ、俺の力作だ!」


サラダとデザートの盛り付けを持ってドアの前に立っていたのは、バーテンのリュウジくん。

リュウジくんはカクテルは勿論、調理も担当していてよくこうしてまかないを持ってきてくれる。




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