愛してるって言って | ナノ





消毒8




天井なんて見えないくらい真っ暗になったのは、ナオトくんの顔で覆われたからだって気づいた時にはもう、チュって小さな音が鳴っていて…

ガタン!

聞こえた音は、フロアの出入り口。












「風紀罰金払いてぇの、お前ら?」


ド低い本気口調が、届いた。

ガバっと起き上がった私はズキンと痛むこめかみを押さえて顔をしかめた。

でも今はそれどころじゃなくて…


「なんで?」

「あ?」

「何で戻ったの?」

「どういう意味?」

「だってリンさんのとこ行ったんでしょ?」

「送っただけだろ」

「でも付き合ってるんでしょ?」

「はぁ?」

「だから送り買って出てるんでしょ?」


私の言葉にアキラは盛大なタメ息を零した。

さも呆れたとでも言うような…

でもそんな顔されてもそう聞いたもの!


「ナオト、どけ」

「はい」

「今のは見なかったことでいいな?」

「はい、すいません」

「二度はねぇぞ」

「はい…」

「たく、面倒くせぇ…」


私の腕を引き上げるアキラは、そのまま私の腰に腕を回して最初の日と同じようにお姫様抱っこで私を店内から連れだした。


「おとなしいじゃん」

「…恥じらいぐらいもっています」

「へぇ」

「もう」

「誰に何聞いた?」


そう言った声は低くて、でも私を見つめるアキラの瞳は怖くない。

煙草と香水の匂いでいっぱいになって私はまた頬が緩んでいく。


「言えません…けど、オーナーの方がリンに熱入れてるって…それを鼻にかけてるって…」

「サクラか、たく」


なんで?

何でバレた?

サクラさんなんて一言も言ってないのに…


「図星だな」


プってアキラが笑って。

その笑顔にホッとした。


「だから言いませんって!」

「もう分かったって。それよりお前…サクラの話鵜呑みにしてそれで送りのこと聞いたわけ? テツヤの席で…」

「別に」


ふんって顔を背ける私は完全に恥ずかしいのを誤魔化すだけに集中していて。

さっきからどうにもドキドキしてしまっていて…

それがアキラにバレたら絶対にからかわれる。

だから必死で気を紛らわすように違うことを頭に浮かべていた。

それなのに…―――


「ヤキモチか、可愛いじゃん」


とんでもない言葉を投げられた!




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