愛してるって言って | ナノ





消毒7






「あ、起きた?」


パチっと目を開けると、黒服ナオトくんが私を見下ろしていた。

ISLANDの店内は薄暗くて、キャストもほとんどいない。

ボーイの子がせっせとフロアを清掃していて、キャッシャーさんが売上の計算をしている。


「私またやっちゃった?」

「うん、また…大丈夫? 気分悪くない?」


ナオトくんの手が私の前髪をふわふわ撫でてくれて、それが妙に心地良い。


「大丈夫…あのア…オーナーは?」

「あぁ、リンさんの送り。店長はサクラさんの送り…やっと俺の出番じゃない? アイラさんの送り担当、俺!」


ハハハって笑うも、よく見たら私ってばナオトくんの膝枕状態。

ソファーに座るナオトくんの膝にガッツリ頭乗せていて…

慌てて起き上がろうとする私に、「いいから寝てて」って優しい言葉が飛んできた。

…照れる。

こんな展開、今までの私からは想像もできない。


「ねぇ、アイラさん」

「え? なに?」

「何かあった?」


少しくぐもったナオトくんの声に、私は閉じていた目を開けた。

ちょうどナオトくんの顔が下から覗き込めるっていう、すごい位置にいる私。

スッと綺麗な顎ラインに思わず見とれてしまう。


「酒で倒れたわけじゃない気がして…」


どうしても頭に残っているアキラの「…オレ」って言葉。

現に今はリンの送り中。


「オーナーはリンさんの送り担当?」

「え、うん。ナンバー1しか送らないかなぁ、オーナーは。…気になる?」


ナオトくんの鋭い突っ込みに私は表情一つ変えずに「別に」って答えた。

本当は物凄く気になっているんだろうけど、でもここでそんなこと明かせない。

仮にもまだボーイだってキャッシャーだっているし、黒木店長だっていつ戻ってくるか分からない。

けど、アキラだけはここに戻ってこないんだって分かった。

色恋は風紀罰金なのに、それでもあの二人は愛を貫くんだろうか?


「でもすごいドキドキしてない、アイラさんの心臓」

「…え?」

「何か振動伝わってくる…。それとも、俺の上にいるからドキドキしてくれてたり? それなら嬉しいけど…」

「ナオトくんってキャストみんなにそういうこと言っちゃうわけ?」


くすくす笑う私に、ムッとしたナオトくんの視線が降りてくる。

そのまま私の顔にその綺麗な顔を近づけて…―――




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