愛してるって言って | ナノ





消毒3




黒服ナオトくんは別のテーブルにサクラさんを案内していて、私の前には黒木店長。

私の背中に腕を回して、テツヤさんのテーブルを通り過ぎる。

あれ?

どこまで行くの?

連れて行かれたのはスタッフルーム。

バタンとドアを閉めて、はぁー…っと大きくタメ息をついた。


「店長なんでここに?」

「悪かった」

「え?」

「…肩」

「あぁ」


思わず苦笑いした私、黒木店長が瀬尾にキスされたそこをそっと触った。

でも、次の瞬間、バタン!と大きな音を立ててドアが開く。


「ユヅキ!」


怒鳴ったのはオーナーアキラ。

私と黒木店長を見て、チっと舌打ちをする。

そのままグイっと腕を引かれて、私の肩にチュっと唇をつけた。


「な、なに…」

「黙っとけ」

「な…」


によ…。

二人共なんなのよ?


「ケイジ、出てろ!」

「はい」


くぐもったアキラの声に黒木店長は私を一瞬だけ見ると、その視線を逸らしてスタッフルームを出て行った。

当たり前に二人っきりの私たち。

アキラのキスは止まらなくて…

左肩だけに留まらず、右肩にまでも唇を落としていく。


「…オーナー…」

「…他に触られた場所言え」


本気口調で聞かれて…私は仕方なく瀬尾に触られた場所を全部教えた。

それはまるで消毒…というのだろうか?

アキラの唇が私の身体に触れていって…

ドキドキしたのは言うまでもない。


「もう…」

「あぁ」

「なんですか、このキスは?」

「さぁね」

「消毒ってこと?」

「かな」

「オーナー?」

「あぁ」

「私以外の子にもするの?」

「すると思う? お前は特別!」


…顔が緩んだ。

やばいって!!

慌てて顔を逸らす私に、後ろからギュっと抱きしめるアキラ。


「お前今喜んだだろ?」


超意地悪な質問。


「そんなことないです」

「強がるなって」

「別に強がってなんか」

「もう行け、テツヤが待ちくたびれた顔してた」


アキラに言われて思い出す、テツヤさん。

指名入れてくれていたんだって。




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