愛してるって言って | ナノ





消毒2




「ISLANDのアイラです、ご指名ありがとうございます」


ペコっと頭を下げる私に、「アイラちゃんこっち」そう言うナンバー1のリン。

リンの隣でドカンとした態度で座っている男がナオトくんの言った岡村?

チラっとまだ膝をついているナオトくんに視線を向けると、ほんの小さく頷いた。


「失礼します、指名ありがとうございます」

「まぁ、座れよ」

「はい」

「おめぇも何か飲めや」

「わぁ、嬉しい! じゃあいただきますね」

「あぁ」


私が座った途端、反対側にいた人が私の肩に腕を回した。


「この人、岡村さん。お連れの瀬尾さんがアイラちゃんのこと気に入っちゃったんだってぇ」


リンが岡村の奥から顔を出してそう言った。

なるほど。

それで私を…


「瀬尾さん、宜しくお願いしますね?」


ニッコリ私が笑うと「こちらこそ」涼しい顔で言われた。

そんな私を見つつも、スッとナオトくんが立ち上がってテーブルを離れていく。

その後ろ姿をジッと見つめていると、こそっと黒木店長に耳打ちしていてその視線が私に飛んでくる。

これで安心。

きっとナオトくんが上手く言ってくれたに違いない。

黒木店長の見張りがついていれば私はきっと大丈夫だ。


「アイラは、この後ヒマ?」

「え、今日ですか?」

「うん、俺とアフターとか」

「ごめんなさい。今日はもう…」

「そうか。じゃあまた誘うよ」

「はい、待っていますね」

「うん」


そう言った瀬尾は私の肩に顔を埋めるようにしてチュっと口付けた。


「アイラちゃんテツヤさんのお気に入りだからね〜」

「…いえ」

「瀬尾さんって、ああ見えてお金持ちよ」

「そうなんですか!?」


思わず食いつく私に、リンはニヤっと笑う。


「テツヤさんもいいけど、それだけじゃナンバー入りはできないわよ」


嫌味っぽくお客の前でそんなことを口にするリン。

この人の言いたいこととか、策略とかいまいち分からなくて曖昧に答える私に、お酒の入ってヒートアップしていく瀬尾はどんどん私の身体に触れてきて…

肩に三度目のキスを落とされたところで「アイラさん、テツヤさんお待ちです」そんな黒木店長の助け声。

席を立つ私を寂しげに見つめ上げる瀬尾に微笑んで耳元で囁く…


「待ってて下さる?」


勿論って笑顔で言う瀬尾のテーブルから私は離れた。




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