愛してるって言って | ナノ





優しいヤクザ2




予想していなかったわけでもないけれど、テツヤさんに枕はないって安心しきっていた部分もある。

だからいきなりの申し出に私は大きく目を見開いた。

そんな私を見ているテツヤさん、堪えられない!って感じにブハって笑いだした。


「冗談だって、冗談! ユヅキの面倒は一生みてやるけど、抱くことはしねぇーって俺」

「な…もう、からかったんですかぁ?」

「いやお前ほんと可愛っいいなぁ〜…。抱かれたいなら抱いてやってもいいかなぁ、もう…」

「そんなこと言ってませんよ私」

「けどお前が他の男に抱かれるなんてこと、絶対許さねぇ」


…テツヤさんも本気口調だった。

本物ヤクザの本気の言葉に、背筋がゾクっとした。

これは、テツヤさん以外に抱かれちゃいかんと本気で思った。

でも…―――


「そんな私、枕やる気ないですし、男なんて好きにならないです。テツヤさんの心配は無駄ですよ」


そう言ったんだ。

私の言葉を聞きながらも、テツヤさんは少し悲しげな顔を浮かべてしまう。

わりとよくこういう顔をするテツヤさん。

一体何を抱えているんだろうか?


「テツヤさん?」

「え、ああ…」

「どうかしました?」

「いや」

「ん?」

「うん…ユヅキー…男が嫌いなのか?」


突然のテツヤさんの言葉に、私は頷いた。


「母は、恋をする度に信じて裏切られていました。働いたお金も全部持っていかれて…誰も本当に母を愛してくれる男なんていませんでした。私はああなりたくありません。だから男も…人間も信じない」

「…俺は?」

「え…」


思いも寄らぬテツヤさんの問いかけ。

でも、信じているなんてハッキリと言えない。

こうして私なんかに家と働き口を紹介してくれたアキラにでさえ、信じきることはできない。

俯いてしまう私の頭に、テツヤさんの手がポンって乗っかる。


「ごめん、無理に聞いたな。けどな…俺は絶対お前を裏切ったりしねぇ。それだけは信じて欲しい…アキラやケイジじゃなく、俺を信じて欲しい」


真剣な顔だった。

分からないけど、信じてみたくなる。

こんなに私を構ってくれた人、今までいない。

だから、甘い夢を見てみたくなる…―――


「はい」


そう答えたら、テツヤさんが私を優しく抱きしめた。




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