愛してるって言って | ナノ





幼馴染3




テツヤさんに対しては、さすがに敬語を崩すなんてことはできなくて…


「ユヅキちゃんケチャップで名前書いて〜」


本物ヤクザがそんなことを叫んでいて、それに私は卵をかき混ぜながらプっと笑ってしまう。

あのオーラ、あの貫禄で、あんな台詞をよくもまぁ、吐けたもんよねぇ、テツヤさん。

アキラやケイジの前では、ただの幼馴染なのかもしれないね、きっと。

そんな関係を少し羨ましく思った。

私にはそういう相手なんていないから。

だからか、こういう三人を見ていると、そこにある絆みたいなものを自然と感じていた。


「へぇ、料理はできんだ?」


くわえ煙草で、首にタオルを巻いたバスローブ姿のアキラ、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してゴクゴクと喉を鳴らして飲んでいる。

飲む度に動く喉仏をジッと見つめていた私は、アキラがニヤっと笑ったことに気づきもしなくて…


「思い出してる? 昨日のこと」

「へっ?」


私の後ろから抱きすくめるように腕を腰に回すと、首の後ろにチュっと唇を吸いつけた。


「なにっ!! ちょっとやだっ!」

「うなじ見せてるお前が悪い、男はみんな好きだよ、ここ」


“ここ”って場所で、アキラの口の中から這い出てきた舌が、私のうなじを厭らしく這い降りていく…

卵…


「アキラ…ヤメテ、お願い…」


ガクガクって足が震える。

恐怖なのか、快感なのか、分からない感覚。

私の言葉にハッとしたようにアキラがすうっと離れていった。

気まずそうに煙草を口にして煙を吐き出した。

何も言わずにポンポンって私の肩を叩くと、テツヤさんとケイジのいるリビングに戻って行った。


はぁー…


長いタメ息を吐いて、後ろの冷蔵庫に背をつける。

心臓が驚くくらい脈打っていて、全身がカアっと熱い。

なによ、これ…。

あんな来る物拒まずな人にドキってするなんて、どうかしてる!


男なんて信じるだけ無駄。

最後は絶対に裏切るんだから。

用のない女は簡単に捨てられる。


だから私は、誰にも恋なんてしない…―――




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