愛してるって言って | ナノ





幼馴染2




全くもって覚えていないから何も言い返せないわけで、もしかしたら私はお酒を飲むと、誘惑しちゃうのかもしれない。

それは困るなぁ。

ガックリうな垂れる私をクックックって肩を揺らして笑うアキラは、バスローブを羽織ると、そのままシャワー室へと消えていった。

ウソだって分かっていながら、何も覚えていないからどうすることもできなくて…

処女を捨てたんだと、仕方なく思うことにした。


でも、不思議と嫌じゃなかった。

相手がアキラなら構わないなんて思ってしまう私は、優しくされて調子に乗ったんだと思う。



アキラに続いてシャワーを浴びた私は、しっかりと服を着て出ていく。

脱ぎ散らかした洗濯物を洗濯機に入れてスタートボタンを押してからリビングに顔を出した。


「よお」

「あ、テツヤさん!」


見慣れた顔がソファーに座って煙草を吸っていて、黒木店長までもがそこにいた。


「オムライス作れよ、ユヅキ」


テツヤさんの言葉に私はとりあえず隣にひざまづいて、下から見つめあげた。


「テツヤさん、昨日はすみませんでした。せっかくアフター誘っていただいたのに」


頭を下げてそう言う私に、優しい手がポンっと降りてきた。

そのまま私のまだ濡れたままの髪を撫でて、「気にすんな」って言葉。

ヤクザなのに、優しい…。

何か裏があるのかな?

やっぱり私、ヤクザの女になっちゃう系?


「ユヅキ、腹減った」


そんなことを考えていた私に、黒木店長の声。


「もう店長!」

「それヤメロって。プライベートまで店長って言われるの嫌だっつーの俺」

「じゃあなんて呼べばいいですか?」

「別に店長以外なら何でもいい」

「じゃあ黒木さん?」

「かたいなぁ…」

「…じゃあケイジ…」

「ん、OK!」


たぶんだけど、この人もプライベートは敬語なしでイイってタイプだと思った。

だから、タメ語で話す私に対して一切何も言わない。

それが、この人達の普通なんだって、ちょっとだけ分かったんだ。




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