初出勤6 「すみません、アフターいきます」 「そうしろ。いい店連れてってやる。ラストまでいるからお前ずっとここにいろよな」 「…あの」 「なんだよ?」 「どうしてそこまで私にしてくれるんですか?」 聞いてもいいのか分からなかった。 テツヤさんやオーナーには聞いちゃいけないことが沢山あるんじゃないかって。 そういう地雷を踏んでしまうと、後々エライ目に合いそうで。 けれど、どうしても聞きたくて… 「知りたいのか?」 「はい、できれば」 「枕やるか?」 「はい、えっ!? やりませんよっ!」 「なんだつまんねぇ!」 「からかわないで下さいって」 「はははは、まあそれは後で教えてやるよ。とりあえずお前酒飲めよ、ほらプラチナ入れてやる」 またか… なんて口に出して言えるわけない。 この高級シャンパンの美味しさすら分からない私はそれでもテツヤさんに勧められるまま飲むしかなくて、気づいたら暗くなった店内のソファーに横たわっていた。 ――――――――――… 「あれ? う…」 頭がガンガンしてグルグル目が回ってる。 気持ち悪い… 「おう、気づいたか」 声に、薄く目を開けると、スーツ姿のオーナー。 私のオデコにピタっと手を当ててポンっと軽く叩いた。 「イタッ」 「ははは、どう、具合は?」 「悪いです…すごく…」 「だろうな、お前限界まで我慢することないよ? まぁ最初だったし、どのくらいまでいけるかなんて分かんなかったけど…客がテツヤでよかったよ」 言いながら、オーナーの手は私の髪を撫でてくれていて、ひんやりした手が少しだけ気分を良くしてくれた。 頭がズキズキしすぎて、記憶を辿ろうにもできそうもない。 「私何しちゃいました?」 「ぶっ倒れちゃいました、ユヅキさん」 「……そう、ですか…すいません…」 どうしてか自分の失態に泣きそうになった。 接客一つできないって、言われたようで、きっと母にこだわっている私は、こんなにも惨めな気持ちになってしまうんだと。 |