愛してるって言って | ナノ





初出勤3




「ISLANDのサクラです、こんばんは、道明寺さん!」


サクラさんがそう言ってお客様のお席に着くと、クルクルパーマ頭のそのお客様は私に視線を移した。


「こちら新人のアイラちゃんです。道明寺さん仲良くしてあげて下さいね!」


サクラさんに紹介されて、私は丁寧にしゃがむと道明寺さんをジッと見つめた。


「初めまして、ISLANDのアイラです。よろしくお願いしまーす」


軽く頭を下げると、「おう、座れよ、アイラ」…早速隣に呼ばれて私は緊張しながらも隣に座った。

サクラさんが反対側で道明寺さんのお酒を造っていて、私はそれをジッと目で見て頭の中で何度も繰り返して覚えた。


「牧野さんとは順調ですかぁ?」


わざとらしく鼻につく喋り方をするのもキャバ嬢の決まりらしくって。

そういう喋り方が嫌いな方も中にはいるらしいけど、この人は得に問題なさそうだった。

それにしてもこの人の着ているものから、持ち物から全てがブランドで固めてあって…


「道明寺財閥…?」


ついうっかりそんな言葉を漏らしてしまった私に、サクラさんの鋭い視線が飛んできた。

それはNG用語だったのかもしれなくて…


「おお、お前中々分かってんじゃねぇか!」


そう言って道明寺さんは私の肩に腕を回してきた。


「すみません私、失礼なことを…」


すぐに謝ったけれど、全然大丈夫って感じで、道明寺さんは私に「好きなもん飲んでいいぞ」って言葉。

ホッとしたようなサクラさんの顔に、怒られるのを覚悟で笑みを返した。


「まぁ俺様ともなれば、世界中の女が知っていて当然だ。むしろ知らなかったらここにはもう来ねぇところだ」

「もちろん存じております。道明寺さんに会えるなんて感激です」

「そうか、そうか! そうだろう! よし、今日は飲むぞ!! おいお前、この店で一番高いシャンパンを開けろ!」


スッと腕を上げて黒服のナオトさんを呼ぶと、そう告げた。


「かしこまりました。ありがとうございます、道明寺様からドンペリ・プラチナいただきました!」


ナオトさんの力強い声がそう言うと、フロア内が湧いた。


「おう、お前の分も頼めよ」


そう言って機嫌良さげに私の分のドンペリ・プラチナも頼んでくれた。

さすが、財閥は違う!

数分でこんなにお金が飛ぶ世界を目の当たりにした私は、少しだけビビッていたんだ。




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