指導3 「あの、永久指名ってなんですか?」 「は? アイラちゃん誰かに言われたの?」 驚いた顔で煙草の灰を灰皿で落とすサクラさんは、綺麗な手を動かして又口元に煙草を運ぶ。 「ええ、テツヤさんに…」 「は、アンタあの人うちのバックについてるヤクザよ? 分かってる?」 「え、そうなんですか?」 「…本当無知なのね」 呆れたようなサクラさんの顔に、私はちょっとだけ俯いた。 確かこういうお店には必ずと言っていいほどバックにヤクザがついているって、単なる知識はあったけれど、それがテツヤさんのところだとは知らなかったわけで。 でもよく考えたらテツヤさんとオーナーが仲良くしている時点でそうなんだと思うべきだったなぁ。 「オーナーと、店長とあのヤクザは幼馴染なのよ。元々あの三人が地元では顔の利く人だったみたいで、でもまぁ地元で色々問題起こして、こっちに移動してきたってわけ。土田組は本部は神奈川にあるんだけどね。元々土田組って組は世界でも数本の指に入るぐらい大きな裏組織で…、その若頭があのテツヤさん。彼はここを気に入って住みついているって。とにかくあの人もこの世界じゃそうとうの悪らしいから、逆らわない方が自分の為よ。なんせ本物ヤクザだから、キレちゃったら手に負えないって、オーナーも店長も言ってたわ」 「…すごい方なんですね、テツヤさん…」 サクラさんの話に、ゾクっとしてしまう。 ヤクザは分かっていたけど、実際そういうのを聞くと、明らかに住む世界が違うし、どうして私なんかに目をつけたんだろうか? 「枕だけはなっちゃダメよ、後が怖いから。でもアイラちゃんならオーナーがなんとかしてくれそうだけどね」 「え、どうして?」 「だって、リン溺愛とはいえど、アイラちゃんに目をかけているのは一目瞭然よ。あの店長に担当つかせる時点で、オーナーがバックにいるのが見え見え」 さっぱり分からないって顔をしている私に、くすっとちょっと馬鹿にしたようなサクラさんの笑いが届く。 「一応ね、キャストの担当ボーイってのがいるのよ! それぞれね。新人につくのはたいてい黒服のナオトさん。あの人女の扱い上手いから。アイラちゃんの担当は誰?」 「確か、黒木店長」 |